<長さ234cm 幅112cm コットン100%>
バティックとは、本来“ろうを使って模様を描き、染め分ける技法によって作られた布”を指します。
本作は、インドネシア中部ジャワ島北岸の港町チレボンで制作された奉公会様式のバティックです。海上交易で栄え、多彩な文化を受け入れてきたチレボンならではの、伸びやかで華やかな意匠がのびのびと表現されています。
布面は上下で二分され、上半分には黄色の地に白抜きの点描がびっしりと配され、下半分には青の地に花と蝶の文様が展開しています。このように色の異なる二つの世界を対比させ、昼と夜、あるいは朝と夕の移ろいを象徴的に表す構成は、典型的なパギソレ(朝夕)構図のひとつです。
日本占領期に広まった奉公会様式では、日本的な花を思わせる桜風・菊風の文様が多く用いられました。本作でも桜風・菊風の大輪が布面を大きく占め、そこに舞う蝶文様が重なることで、繁栄や生命力、変化や再生といった意味合いが一枚の布に込められています。
本作品が制作されたチレボンは、中部ジャワ島北岸に位置する港町で、古くから海上交易の要衝として発展してきました。
中国やインド、中東、そしてヨーロッパや日本など、さまざまな地域との交流を背景に、多文化が自然に溶け合う独自のバティック文化が育まれた土地です。
日本占領期には奉公会様式と呼ばれる意匠が取り入れられ、日本由来の花を思わせるモチーフや、細やかな点描表現がチレボンらしい伸びやかな感性と結びつきました。
本作も、そうした歴史の流れのなかで生まれた一枚であり、港町チレボンが持つ開放的な気風と、奉公会様式の繊細さがバランスよく調和しています。
このバティックは、布面を上下二つの世界に分けるパギソレ構図で表現されています。
上半分には黄色の地が広がり、白抜きの点描が一面に施されることで、柔らかな光がきらめく空のような印象が生まれています。
対照的に、下半分は青の地に花と蝶が舞う世界が広がり、静けさのなかに華やぎを秘めた夜や、夕暮れの空気感を思わせます。
異なる色の地を上下に配置することで、時間の移ろいや心の変化が一枚の布に象徴的に表現されており、身につける人の所作に合わせて、朝と夕がゆっくりと揺れ動くような味わいをお楽しみいただけます。
本作の主役となっているのは、桜風・菊風の大輪と、そのまわりを軽やかに舞う蝶の文様です。
桜風の花は、ほころぶつぼみや花吹雪を連想させ、新しい始まりや季節のめぐりを象徴します。
菊風の花は、花弁が幾重にも重なることで、長寿や格調の高さ、途切れることのない繁栄への願いを表現していると言われます。
そこに蝶が寄り添うことで、変化や再生、より良い方向への移り変わりといった意味合いが加わり、晴れやかな場面にふさわしい吉祥文様として、一枚の布のなかに豊かな物語が描き込まれています。
色彩構成は、黄色と青という対照的な二つの地色を軸に、その上に赤・紫・橙などの花や蝶が重ねられた、とても華やかなものです。
明るい黄色は光や喜びを、深みのある青は静けさや落ち着きを感じさせ、互いの色を引き立て合いながら、布全体に奥行きのあるリズムを生み出しています。
背景には、白抜きの点描(トゥティル)が途切れなく配置されており、遠目には柔らかな霞のように、近くで見ると一粒一粒の息づかいが感じられる、豊かな表情が広がります。
鮮やかな配色と繊細な背景文様が重なり合うことで、視線を引きつけながらも、どこか品のよい落ち着きを保った一枚に仕上がっています。
制作には、チャンティンと呼ばれる銅製の小さな道具を用いた手描きろうけつ染めの技法が用いられています。
まず、温めたろうをチャンティンにすくい、細い線や点を一筆一筆描きながら文様を形づくっていきます。その上から染料を重ねると、ろうで防染された部分が白く残り、文様として浮かび上がります。
本作のように、複数の色を重ねていく場合には、ろう置きと染めを何度も繰り返し、色の順序や重なりを慎重に計算しながら制作が進められます。
占領期以降に用いられるようになった化学染料がもつ鮮烈な発色力を活かしつつ、伝統的な手描きの工程を守ることで、どこまでも細やかな表現が可能になっています。
細部に目を凝らすと、線の太さや点の大きさがほとんど揺らぐことなく、一定のリズムで続いていることがわかります。
花弁の縁取りや蝶の羽根の模様、背景のトゥティルに至るまで、ろう置きの精度が高いため、染め上がったあとの色の境界もにじむことなく、非常にくっきりと保たれています。
また、モチーフ同士の間合いや、上半分と下半分のバランスもよく計算されており、どこを切り取っても一枚の絵のように見える構成力の高さが感じられます。
長い経験に裏打ちされた職人の集中力と手仕事の確かさが、布のすみずみにまで行き渡った、見ごたえのある一枚です。
港町チレボンでは、時代ごとの政治的・文化的な変化を受け止めながら、新しい意匠をしなやかに取り入れてきました。
日本占領期に広まった奉公会様式もその一つであり、日本的な花を思わせるモチーフや、明快な構図、鮮やかな色彩が、既存のチレボン・バティックの感性と結びついて独自の発展を遂げました。
本作のような華やかな花と蝶の取り合わせは、婚礼や祝祭など、特別な場面を彩る装いとしても好まれてきたと考えられています。
歴史の一時代を映し出す意匠でありながら、現代の暮らしのなかでも十分に映えるデザインで、身につけても、インテリアとして飾っても楽しんでいただける、表現力豊かなバティックです。
洋服の生地として仕立てると、ワンピースやスカートにしたときに、手描きならではの風合いがそのまま装いのアクセントになります。
また、大きめのサイズを活かしてテーブルクロスとして広げたり、棚や家具の上に敷いたりすると、空間に柔らかな彩りが加わります。
壁に掛けてタペストリーとして飾れば、模様の奥行きが際立ち、お部屋の雰囲気を大きく変える存在になります。
さらに、ベッドに掛けてベッドスプレッドとして使うと、寝室が一気に華やぎ、毎日の生活に美しいアクセントを添えてくれます。
用途に合わせて楽しめる、自由度の高い一枚です。
ご購入の前に、以下をご理解ください。
※ 手作りのため、わずかな色飛びが見られる場合があります。
※ 写真ではできる限り実際の色を再現していますが、多少の差が出ることがあります。
Rosilyでは、できるだけ状態のよい布を選び、お値打ちにお届けできるよう努めています。
この商品は、Rosilyの健が推薦します!(2025年11月20日)


















